いつの頃からだったろうか。
年を重ねるのがイヤでなくなったのは。
むしろ、早く年をとりたくなった。
ばあさんになった自分に会いたくなった。
『バカの壁』の養老先生が、愛猫の「まる」を肴に、人間社会を
解剖したエッセイ集。
「人っていうのは、生きているだけで迷惑」
「発見する」とは、「自分が変わること」
生き方を発見するというのは、「自分は何のために生きているのか」
を考えること。
世界は役に立たないもので満ちている。
などなど。
読めば、力の入った肩のあたりが軽くなる。
猫の「まる」のように生きたくなります。
この本で衝撃を受けたのは、この一節。
「ゴミ屋敷というのは、現代の典型的な自己主張だと私は思っています。
住んでいる人は、暗黙的に『俺はゴミだ』と言っているんですよ」
この本を読んでいた頃、私の実母が一人暮らしをしているマンションが、
「ゴミ屋敷化」していることに気づき、必死で片付けている最中でした。
(その話はまたゆっくり)
母の声なき声が、聞こえた気がしました。
養老先生は、こうも語ります。
「迷惑をかけたり迷惑をかけられたりというのが、生きている
ということじゃありませんか。そういうのを基本的人権と言うんです。
自分がいるということ自体が、しょうがないことなんですから」
わたしがこの先、どんなばあさんになるのか、もうなっているのか
わからないけれど、
「ま、そりゃそうですね」(笑) と、人の気持ちを軽くするような
人間でありたいと思うのです。
むつみ
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