笑えない笑い話

わたしと母の格闘記

2011年、父の病気が発覚しました。

病名は悪性リンパ腫。

そして2013年3月9日、84歳で永眠。

そこからわたしと母との格闘がはじまりました。

「わたしとわたし」の格闘とも言えますが・・・。

ここでは6年にわたるわたしと母との格闘記を記していきます。

 

何度か繰り返される母のストーリーに

「保険証紛失」があります。

 

一年くらい前の保険証の更新時あたりから始まりました。

 

新しい保険証を騙し取られた。

自宅に「市役所から来た。送った保険証にミスがあったので回収に来た」

という人がやって来たので、うっかり渡してしまったが、市役所に聞いたら

そんな事実はないと言われた。騙された。

 

というお話。

 

俄かには信じがたいですが、その時は親戚も巻き込んでしまい、大騒ぎに。

仕方なく市役所に電話をするとその答えは・・・

 

「新しい保険証はまだ郵送していません。もう少しお待ちください。」

 

安心して母に伝えても、これを信じようとしません。

 

「もう騙し取られたのだから、私のところへは送られてこない。なんとか再発行してもらえるように

頼んで欲しい」の一点張り。

もう少し待っていれば届くと言っても、退くことを知りません。

 

もちろん、数日後無事に保険証は届きましたが、それまでの電話攻撃のしつこさときたら!

 

ところがほどなくして、今度はその保険証を無くしてしまったと泣きの電話。

 

市役所に再発行を頼むと同時に、全ての書類の郵送先を私に変更。

「再発行」の印入りの保険証を渡したのが、昨年の今頃です。

(ちなみに、無くしたはずの保険証は、別の引き出しの中にありました)

 

 

そして、今回。

 

「大失敗しました。保険証をなしくてしまいました。一度再発行してもらったから、今度はダメかも。市役所の人にそう言われた」

 

日に何度となく、同じ内容の電話。出なければ、留守番攻勢です。

本人には電話した記憶がないのですから、どうしようもありません。

 

話を聞くと、いつの間にか

 

「保険証は喫茶店で背後から知らない女の人に、スッと奪われた」というストーリーに

書き換えられていました。

 

市役所に説明しようと思ったのでしょうか。

ご丁寧に、何かのDMの裏に、何月何日に、どこで何が起きたか、事細かな成り行きまで

書いた下書きがありました。

知らない人が多い読んだら、信じてしまいそうです。

 

残念ながら、そこに書かれている保険証の色が違うのですが・・・。

 

 

今日は、デイサービスのある月曜日。

朝から、また同じ内容の電話です。

 

「これから行って話を聞くから。お母さんがデイサービスに行っている間に

市役所で私が再発行を頼んであげるから」

 

そう言ってなだめても、「大丈夫かなあ、大丈夫かなあ」と同じエピソードを

繰り返します。

 

そうするうちに、母がふと、おかしなことを言い始めました。

 

「それとね、ここに有効期限は平成32年って書いてあるんだけど、これって

まだ切れないよね?」

 

「えっ? それ、何を見て言ってるの?」

 

「う〜んとね、後期高齢者被保険者証 って書いてある」

 

 

「お母さん、そrふぇ、保険証だよ。今。手に持ってるんでしょ。」

 

 

「え〜! これがそうか。おかしいな、無くしたはずなのに。ま、いいや」

 

「ま、いいや? だとお!」

 

 

ここで笑えたら、私もたいした人物なんですが。

 

残念ながら、器の小さい私は、ここでプツリと切れてしまったのでした。

 

 

むつみ

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